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病理診断と病理検査のはざまで(2)

病理診断と病理検査のはざまで(2)

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 前回、検査センター経由の病理診断(病理検査)の現状を紹介したが、今回は、「保険医療機関間の病病連携/医医連携による病理診断」の影響とこれからのあるべき姿についてお伝えしたい。

3.病病連携が与える影響

 前回、日本の病理診断の7割が営利企業である検査センターと一部の大学の病理学講座によって支えられているとお伝えした。病理医が1件2,000円程度で診断を請け負い、1件8,600円の標本作製料(報酬)の半分以上が病理診断を依頼した開業医や小規模病院に計上されているのが現実である。

 それを受け、日本病理学会が「保険医療機関間の連携(病病連携/医医連携)による病理診断」を提唱した。そして、次回(平成30年)の診療報酬改定で、検査センター経由の病理診断が原則として禁止され、病病連携/医医連携の形に誘導される可能性が高いという。業界や病理医への激震となることが予想される。つまり、検査センターの役目は、病理標本の集配と作製に限られるように制度が変わってゆく。本当に、現状を劇的に変えることができるだろうか?混乱が予想される。

 この形に移行した場合、確かに病理診断料と管理加算が計上できるようになる。ただし、病病連携/医医連携をとるには、病理診断を依頼する医療施設にも標本作製ができる経験5年以上の常勤の臨床検査技師がいることが望ましいという認定条件がついてくる。病病連携/医医連携の普及はこの条件の柔軟性に依存することになるだろう。なぜなら、病理医のいない医療施設の多くには、病理検査技師もいないからである。常勤技師ではなく検査センターで標本作製を代行することで病病連携/医医連携が可能となるように柔軟に対応するしかないと思うが、それに伴う医療費の増大は簡単には許容されないであろうことから、おそらく、現在の標本作製料860点を実勢価格近くまで切り下げて、その分を病理診断料と病理診断管理加算にまわす方略がとられるのではないかと予想される。

 では、「病病連携/医医連携」により、年間840万件に上る検査センター経由の病理診断を請け負っていた病理医はどうなるであろうか?時間外に頑張って外部標本を診断する個人的・個別的なメリットが今以上に縮小されれば、どこかの医療機関に依存する形をとらざるを得なくなるだろう。病理診断科開業医が近くにいれば便利だろうが、現状ではまだ数えられる程度の開業医しかいない。そうなると病理医が常勤する医療機関との連携が重要視される。 病理医が常勤する中規模以上の医療機関は、必然的にこれまで以上に地域貢献への役割が重視される。なぜなら、地元の開業医や小規模病院の病理標本を病病連携/医医連携の形で診断することになるからである。

まとめ

4.これからの病理診断科のあり方

 いくつかの大学では、すでに形を病病連携/医医連携に変えたそうだ。個人への報酬の還元は難しくても、病院に入る報酬を人件費や研究費として病理学講座に還元する仕組みである。これが可能な大学ばかりではないのは現状かもしれないが…。検査センターも常勤病理医によるクリニック開業を目指すことになるだろう。そして、遠隔地の病理標本を東京に集めてみている現在の流れ(形)は大きく見直されると予想される。この場合、病理診断の実務を担当した病理医にはそれなりの報酬が連携病院から支払われるようになる必要がある。病理診断料や病理診断管理加算料が収入として付加されるからだ。この新しい仕組みづくりがうまく機能するかが一つのポイントとなるだろう。

 本来、病理診断の診療報酬は、診断の責を負う病理診断科や病理医にこそ、その報酬が計上されるのが筋である。病理医のいない医療機関(開業医や小規模病院)が病理診断を外部(検査センター)に依頼するだけで、大きな差益が得られており、その収入は優遇税制の対象となっている。一方、末端病理専門医にとっては、病理診断の報酬はあくまで副収入であり源泉徴収されるため、所得税や消費税の対象となっている。

 検査差益や税制上の矛盾以外にも、営利企業が仲介することにより、臨床医にとって病理医の顔が見えず、病理医にとっても臨床医がみえない点が指摘される。病病連携/医医連携を推し進めていくにあたり、臨床医と病理医の「みえる化」、つまり、常勤病理医のいる中型~大型病院のように、開業医や小規模病院の勤務医にとっての顔のみえる「マイ病理医」が実現すれば、医療の質が間違いなく向上する(気楽に質問しあうことでよりよい医療が実現する)と考える。病理専門医自身が監督医あるいは経営者(開業医)として病理診断を受託して精度管理や運営に直接的にかかわり、検査センターは病理医のもとで、標本の集配や標本作製をする形である。言うまでもなく、集配や標本作製にかかわる経費は検査センターの取り分であり、適正化された標本作製料がそれに相当するべきである。そうすれば、検査センターを経由する病理診断の質が高まり、サービスや質的向上の内容が国民にみえるようになるだろう。

 2004年~2005年、私は日本病理学会企画委員会のアドホック委員会「病理医の職能に関するする小委員会」の中で、上述の「マイ病理医」構想の実現に向けて、病理診断のための職能団体、特定非営利法人(NPO)化の設立を提案した。残念ながら、提案が時期尚早過ぎて当時は受け入れられなかったが。この団体を医療機関として登録し、病理診断料や管理加算料を得られれば経営的にも安定するだろう。このような受け皿的な医療機関を地区ごとに設ければ、問題解決への近道となるのではないだろうか。こうした思い切った施策の実践が私たち病理医に今こそ求められている。

<参考資料>

最終更新(2017/06/14)

<執筆者プロフィール>

執筆者プロフィール
堤 寛(つつみゆたか)

はるひ呼吸器病院病理診断科
病理部長

横浜生まれ。病理専門医・細胞診専門医。1976年、慶應義塾大学医学部卒。1980年、同大学大学院(病理系)修了。その後21年間、東海大学医学部病理学に在籍。2001年より16年間、藤田保健衛生大学医学部病理学I教授。2017年よりはるひ呼吸器病院(愛知県清須市)病理部長。同時に「つつみ病理相談所」を開設(愛知県豊明市名鉄線前後駅前)。趣味はオーボエ演奏。「患者さんに顔のみえる病理医」、「社会派病理医」を目指す。
http://www.pathos223.com

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