医師のワークスタイル

メディカルドクターの本音

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ヒューマンダイナミックス社の堤と申します。弊社は、約20年にわたり製薬会社へ多くの先生方を紹介している会社です。
多くの医師が臨床の道に進む中、創薬・育薬の世界で活躍している医師がいることをご存知でしょうか?今回は、現在製薬会社でメディカルドクターとしてご勤務されている医師から匿名で、ご勤務までの経緯や業務内容、臨床医とのギャップについてご寄稿頂きました。


製薬会社に勤務する医師として思うこと

私は臨床医として16年(うち5年は基礎研究)、その後6年治験施設で勤務し、メディカルドクターとして今年で4年目を迎える27年目の医師です。製薬会社への転職を決意した理由は、治験施設で責任医師として80プロトコール以上の治験実施に関わるうちに製薬業界に興味を持つようになったからです。今回は製薬会社に勤務してみて感じたことを想いのままに書いていきます。

製薬会社にはさまざまな部門があり、そこで働く医師の業務内容や責任の範囲は異なります。そして、実務的な業務を担当する者だけでなく管理業務に従事する者もいます。当然、報酬もさまざまです。私は「安全性担当医師」として、安全性管理部門で勤務しています。主な業務は「副作用を発現した個別症例の評価」、「集積した副作用情報の検討」、「規制当局に提出する資料のレビュー」および「部員の医学教育」といったところでしょうか。臨床研究・開発部門、マーケット部門、メディカル部門など、部門によって、また医薬品のライフサイクルに沿って担当する範囲が決まっており、現職では新薬承認前から市販後の安全対策に関わる業務に従事しています。

製薬会社で働く医師にとって、病院勤務と異なる点はいろいろあります。直接患者を診ない、当直やオンコールがない、処方箋を書くことも、白衣を着ることもない。この辺りは想像に難くないでしょう。大きな違いは、最初に入社式があり、企業人としての研修や部門での業務研修を受け、実務について先輩に学んでいくこと。業務関連知識としてGCP、GVPやGPSPといった承認前の治験実施から市販後臨床試験、医薬品安全監視および安全対策に関わる省令も学ぶことになります。

会社によって異なるとは思いますが、多数の会議に出席し、メールの海に溺れながらひたすら業務をこなしていく。最初のうちは戸惑うことも少なくありません。病院勤務と比べてどうか? 忙しさやストレスの質は変わりますが、決して楽ではないというのが本音です。しかし、有給休暇は保証されているし、仕事によってはパソコンを使って在宅勤務をすることもできるのはメリットだと思います。

職場環境という面でも随分雰囲気が変わります。病院で一緒に働いていたコメディカルや事務職といった、どちらかと言えば医師をサポートする立場の人たちはほとんどいません。それどころか周囲には能力的に対等、あるいはそれ以上に優秀なビジネスパーソンがゴロゴロいます。外資系であれば当然外国人も同僚になる。その中で物事を円滑に進めていくには、「決して独りよがりではなく、多様な価値観を認め柔軟に物事を考えて合意を形成していくこと」が必要になります。

また、「製薬会社に転職したらどのように生きていけばよいか」という質問を受けることがありますが、個人的な経験からは、臨床医としての経験を活かしつつ、新しい環境に慣れていくしかないでしょう。たとえ専門の診療領域に関する業務でなくても、医師として実臨床で患者を診た、大学院で研究を行った、あるいは海外留学した経験は役に立ちます。もちろん必要に応じて知識の向上に努めなくてはなりませんが、製薬会社ではその領域の第一線の専門家の先生方に学ぶ機会もあり、そこで医科大学や臨床研修で学んできた「基礎知識があるため理解が早い」のは強みです。

では、「医師としての強みを生かすために最も重要な資質はなにか」。これは医療の現場でも言えることですが、「周囲とのコミュニケーション能力」ではないかと思います。製薬会社における意思決定は、病院勤務の担当医として患者の治療方針を自らが決めるのとは異なり、多くのstakeholderの合意が必要となるため、やや複雑なプロセスを踏みます。その中で臨床医としての経験を生かしながら会社に貢献できる“仕事”をする。つまり、医師としての経験と素養を礎にしながらチームの一員として協力的に働く、あるいはチームを導くように良好な人間関係を築くことが非常に重要な資質です。

医者は「一本足打法」です。ある管理職の先輩医師の話がとても印象に残っています。「製薬会社で働く医師は、医学専門家として確固たる専門性を持って転職してくる。しかし、製薬会社は医学や薬学の研究だけで成り立っているわけではない。製薬会社が継続して世の中に貢献していくためにはビジネスでも成功する必要がある。画期的な新薬であっても取り扱いを誤ると日の目を見ないまま開発中止になってしまう。また、新薬として承認されても、適正に使用されなければ重篤な副作用が多発し処方されなくなってしまう。薬剤の価値を最大限に、リスクを最小にすることを常に考えていかなければならない。だから製薬会社で働く医師は、創薬と育薬を共に考えることのできる企業人としても成長して、『二本足』でバランスよく立ち会社をリードしていかなければならないと考えている。」

「企業人として成長するにはどうすればよいのか」。正解かどうかは分かりませんが、日々直面する業務の「なぜ?」を解消し理解を深めていくこと、また同僚に対して謙虚に向き合い、周囲から素直に学んでいくことではないかと思います。私は3年前の自分が恥ずかしい。そして、日々多様性にもまれながら、違う自分が今ここにいます。病院に勤務する医師としての殻を破り、社会的に成長する機会となるのも、転職のメリットかもしれません。

<プロフィール>

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堤 康行(つつみ・やすゆき)
株式会社ヒューマンダイナミックス
代表取締役社長

ノバルティス、イーライリリーおよびCROのパレクセルで、主に臨床開発とメディカルアフェアーズ部門に所属し、約30年間にわたり各部門の企業医師と業務を共にする。製薬企業およびCROでの業務内容のみならず、近年の製薬企業動向や雇用条件も含めたクローズ情報に精通。その確かな経験と豊富な情報をもとに、製薬業界への医師転職サポートを行う。


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