医師のワークスタイル

ヨーロッパで心臓外科医やってます(3)


ドイツへの留学時期も決まり、留学準備に取り掛かることにしました。他の国でも同様でしょうけど、移民に寛容なドイツの唯一の壁は語学となります。

留学準備① 語学

留学時期が決まった当時は仕事が忙しかった時期でもありました。しかし、「逆境で行う努力こそが真の努力だ」と自分に言い聞かせ、細切れの時間をドイツ語の勉強に当てることにしました。まあ、やったことと言えば、入門用のドイツ語文法の本と、230円で購入した文法問題集のスマホアプリを繰り返しただけですが。

ある日、深夜の病院でスマホアプリでドイツ語をブツブツと練習しながらICUへ向かう暗い廊下を歩いていました。ふと気配を感じて前を見ると、病院の理事長が立っていました。喉元まで出かかった悲鳴を必死に抑える自分に向かって、理事長は「歩きスマホやめてね」と一言だけ発して姿を消しました。当時はまだ病院側に留学時期の報告してなかったんですよね。本当にやっちまった感じでした。

ドイツへの留学経験がある先生方に話を聞くと、「ドイツ語の勉強はドイツに行ってから本格的に始めた」とおっしゃる方が大半だったので、こんな程度の勉強でも、自分としては「俺、結構がんばってる」くらいの気持ちでした。

ドイツ語の勉強を開始して半年後くらいに渡独したのですが、初めは(今も割と)誰ともまったくコミュニケーションが取れませんでした。後日再び先輩方に聞くと「いや、さすがに君よりは勉強したよ」とか言われました。


初めに読んだ文法の本です。語り口調なので、さらっと読めました。

学生時代から何回も「俺、全然勉強してへんよ」に騙されてきましたが、まったく成長できていない自分にガッカリです。言う方もよくないと思うんです。真に受けてサボっちゃう奴が出てくるわけですから。

だからもし次にドイツに行く先生に尋ねられたら、私はこう答えます。「ドイツ語の勉強?まったくやりませんでしたよ?」と。


初めに読んだ文法の本です。語り口調なので、さらっと読めました。


留学準備② 語学学校

当時ほかに苦労したのは書類の準備でした。「アポスティーユ」とか「認定翻訳士」とか、初めて聞く単語ばかりで、まったくの手探り状態でした。書類の詳しい話は、当『医師ぺディア』連載中の杉浦 淳史先生のドイツ留学ブログ(5)に詳細が書いてありますね。自分が書類準備していた時にこのブログがあればどんなによかったか、とすごく思います。これからドイツを目指す先生はラッキーですよね。情報が増えて、どんどんドイツ留学の敷居が低くなっていくんだろうなーと思います。

ドイツでの語学試験に関しても、杉浦先生のドイツ留学ブログ(7)で若干触れられていますが、ドイツで就労する際には、医師であろうとなかろうと語学試験に合格する必要があります。

ドイツ語に限らず、ヨーロッパの主要言語には共通のレベル判定があります。簡単な方から順にA1からC2までの6段階に分かれます。EU外の移住者がドイツで労働許可を取得するためにはB2レベルが必要となります(EU内だとB1で可能だそうです)。逆に言えば、B2さえ取れれば労働許可は下りるわけですので、語学さえできればドイツへの移住は決して難しくないと言えます。

医師職に限らず、語学試験を通れば、役所や民間企業で就職の斡旋をしてくれるところがたくさんあります。ドイツは基本的にほとんどの分野で人手が不足している傾向にあるため、売り手市場になっているわけです。

ともあれ、まず目指すべきはドイツ語B2となります。これはGoethe Institutかtelcという語学学習団体が主催する試験で判定されることになります。日本で受験できるのはGoetheの試験のみで、東京と大阪で受験が可能です。

Goethe Institutは語学学校の経営を行っています。私は東京のGoetheに問い合わせて、ドイツでの語学学校の受講予約と寮の確保をしてもらいました。そして東京Goetheの担当者の薦めもあり、初めはまずミュンヘンの語学学校へ通うことにしました。


これはミュンヘンのGoetheです。現在はこの辺り一帯の建物が取り壊されて面影もありません。語学学校は別の場所に移転したそうです。

語学学校も決まり、荷物も送りました。「さあ、明日いよいよミュンヘンに旅経つぞ!」と気合を入れて羽田空港近くのホテルでテレビをつけたところ、偶然にもニュースでミュンヘンが取り上げられていました。そこにはシリアからの大量の難民がオーストリアから鉄道でミュンヘンに辿り着き、中央駅が難民で溢れかえっている映像が映っていました。

マジか――

テレビの前でしばらく固まりましたが、まあ今さら仕方ないし…
悩んだ末に、「このニュースは見なかったことにしよう」と、そっとテレビの電源を切ったのでした。

<プロフィール>

安 健太(あん・けんた)
カールスブルグ心臓糖尿病センター
心臓血管外科 医師

2004年滋賀医科大学卒業。現在ドイツで医師免許取得し、心臓外科医として働いています。空手三段。学生時代に世界大会・アジア大会に出場経験あり。東京五輪で空手が正式種目となりました。あと16年早かったらな…と思いつつ、遠くドイツからオリンピックの成功を願っています。


医師の海外留学

医師として海外で勉強してみたい。
そのような強い思いをお持ちの先生は、ぜひ弊社「民間医局」にご相談ください。
医師の海外留学を推進し、積極的にサポートを行っている医療機関や企業などもご紹介しています。海外留学に関する情報をメールマガジンにてお届けしております。
ご希望の方は下記バナーより会員登録(無料)をお願いいたします。

MediGate新規会員登録(無料)

MediGateは、医師向けの勉強会やセミナー情報をFacebookに日々更新しています。 みなさんの情報収集にお役立てください。 当社は「レジナビ」「民間医局」「ドクターズマガジン」を運用している会社です。

MediGate 公式Facebook


ヨーロッパで心臓外科医やってます


››› 医師ペディア一覧に戻る