海外

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(15)

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2020年3月16日

ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。


右からボス(Prof.Nickenig)、私、Vedat

Nie wieder!!(Never do that!!)

最近なんか忙しいな〜と思って気付いたのは、ボス(Prof. Nickenig)が行う治療の助手係が増えたこと。というか、上級医たちが忙しく、「ICUに行かなきゃいけないから」とか「他のカテーテルをやらなきゃいけないから」とか言って、「Atsushi(私)、よろしく〜」的に振られるのです。もちろんそれは口実で、どちらかというとボスの治療に入りたくない気配を感じています(笑)。

ドイツでは医療保険が公的保険とプライベート保険に分かれていて、プライベート保険の患者さんはボスが治療するため、症例の約1/3をボス、残りを私たちが行っています。

症例 症例数
大動脈弁 TAVI 51
僧帽弁 MitraClip 6
大動脈弁 TAVI 1
僧帽弁 Pascal 5
三尖弁 MitraClip 5
68

2020年2月実績(稼働日数19日)

そんなある日、ボスの助手をしていて、デバイスの位置調節をしようと僕がデバイスを少し引く動作をすると、ボスが激怒。

ボスWas machen Sie!? Warum haben Sie das gemacht!?(何してるんだ!?)

Ich habe gedacht, das ist sehr schwierig das Device zu ziehen, deswegen wollte ich nur helfen・・・・・・(僕はデバイスを引いてくるのが難しそうだと思ったので、それをサポートしようと・・・・・・)

ボスDas macht nur Operator!! Nie wieder!! Verstehen Sie!? Nie wieder!!(それはオペレーターの仕事だ! 二度とするな! わかったな! 二度とだ!)

Ich verstehe・・・・・・(わかりました・・・・・・)

こんな感じでシバかれました。ちなみにこの話、一緒に治療に入っていた同僚のVedatがみんなに楽しそうに言いふらし、それ以降、僕がちょっとしたミスをするたびに「Nie wieder!!」といってボスのモノマネをするのが、今のボン大学カテ室の流行の最先端です(笑)。


メンタリティの違い

日本人の自分とドイツ人の同僚たち。事あるごとにメンタリティの違いを感じます。ドイツ人の同僚たちは基本的に自分の能力を過信するような感じはまるでなく、意見を求め交換することを厭わず、それによって気分を害することもありません。また、年齢や経験年数に関係なく、「その分野に秀でている人」をとても尊重します。「マイスター文化」と言われている所以ですね。面白いのが、反対意見を言うことが多い一方で、賞賛することも多いことです。これはドイツに限らず、おそらく海外生活の経験がある方は感じたことがあると思います。

それに比べると、日本では古来、反対意見を言うことははばかられ、反対意見に気分を害する人が多く、年齢や経験年数の下の人が上に意見するにはかなり気を使います。だから「根回し」が重要だったりします。さらに日本人は人を褒めたりすることは少なく、リアクションも小さめです。

ただ、最もメンタリティの差を感じるのは、「治療がうまくいかないとき」だと思います。日本では「問題点を個人の技量に帰着させていく」傾向がありますが、ドイツでは「問題点を一般化する方向」に向かい、かつ反省しながらもポジティブに向かい、後に引きずりません。


TAVI合併症症例の後。右からVedat、私、Ulrich(術者)、Malte

先日、TAVIの穿刺部からの大量出血があり、その対応に難渋した症例がありました。ボスも上級医たちも集合して対応し、最終的に無事に終了。カテ後に「何が問題だったか」と原因の洗い出しをしながら「〇〇の対応が良かった」、「△△△を用いればもっと良かったかもしれない」と話していたかと思ったら、その術者が外の工事作業車をみて雑談を始め、みんなも笑い、最後に笑顔で写真をパチリ(下)。日本だったら、不謹慎だとか、反省してない、とかいって叩かれそうですよね(笑)。


TAVI合併症症例の後。右からVedat、私、Ulrich(術者)、Malte

またある日、解剖学的に非常に困難が予想される症例に対するMitraClipで、最終的にはボスの判断で治療を「チャレンジ」しました。結果的に治療は不成功に終わりましたが、最後のDiscussionの時に「でも、✕✕✕という事が確認できたのは良かったね」とか「□□□の結果自体はすばらしかったね」という形で、失敗から得られた知見を一般化して、ポジティブ気味に共有していました。今の循環器医療を引っ張っている欧米では、こういったメンタリティなんだと、事あるごとに思います。

その一方で、日本の「問題点を個人の技量に帰着させていく」考え方も、今世界で認められる日本のカテーテル治療の技術に繋がっているのだと思います。


新潟大学の山本先生


右から山本先生、私

先日、日本から山本知裕先生(新潟大学 麻酔科)がハイブリッドカテ室の見学に来られました。山本先生は2018年まで6年間、ボンで麻酔科医として働き、ドイツと日本の酸いも甘いも経験されている、ドイツ語ペラペラのイケメン先生です。

今回、新潟大学がTAVI導入前ということで、臨床知見のupdateと交換目的にボン大学に来られていました。平日の仕事が忙しい時期だったせいで飲みに行けなかったのがめちゃくちゃ悔やまれます。こうした広い視野を持った循環動態が大好きな麻酔科の先生と一緒に仕事ができたら、すごく楽しいだろうなあ、と思います。

前述のカテ中の写真も山本先生が撮ってくれて、「ブログに載せたらいいじゃない。『本当にドイツでやってるんだよ〜』って。」と言って送ってくれました(笑)。

P.S
ちなみにドイツでは3/13、コロナ感染者のためにベッドを確保するために、緊急性のない予定手術や予定入院患者をできる限り中止するように通達がきました〜。学校も全校休校になり、ちょっとこのすきにベルギーに小旅行してホテルでゆっくりしようとしてたら、さっき電話がきてレストランもプールも閉めちゃったよ〜って。。。笑

<プロフィール>

杉浦 淳史

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科リサーチフェロー

1983年千葉生まれ。2008年福井大学医学部卒業。
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。


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