医師×海外留学

MEDICAL STUDY ABROAD

「海外留学」の意義とメリット

「海外留学」の意義とメリット

さまざまな分野で活躍している医師の経歴を見ると、多くの方が○○大学留学、○○研究所留学など、「海外留学」を経験しています。また、学会へ行くと演者の紹介のときに「アメリカの○○大学に留学し…」というような言葉をよく耳にします。現在、日本の医療は世界トップレベルにあると言っても過言ではありませんし、インターネットの発達した時代にあって世界は非常に近く、「果たして海外留学をするメリットが本当にあるのか」と考える医師もいると思います。

しかし、「海外留学」を経験した医師に留学について話を聞くと、経済的にも大変で、言葉の壁もあり、文化も異なり、厳しさもありますが、それでも「一度は海外に行くべき」と答えます。確かに日本の医療は今や世界トップレベルにありますが、さまざまな分野のトップランナーたちの多くは海外にいますし、最新の医療や臨床技術の多くは海外から生まれています。そうした世界トップの医療を間近で経験することは、医師としてのキャリアアップに間違いなく繋がるはずです。さらに、グローバル医療を体感できることで視野が広がる、英語によるコミュニケーション力の習得などによって国際学会や英語論文への苦手意識が無くなる、世界を経験したことで医師としての自信がつく、グローバルな人脈を築くことができるなど、「海外留学」を経験することで医師としての様々な可能性が確実に広がっていくでしょう。

「海外留学」の意義とメリット

「海外留学」の種類

「海外留学」の種類

■ 「海外留学」には“研究留学”と“臨床留学”の2つがあります。

  • 研究留学

    「海外留学」をする医師で最も多いのが研究留学です。文字通り、研究をするために留学するもので、大学院に進学して博士号を取得後、教授や医局と繋がりのある海外の医療機関や研究室に留学することが一般的です。
    研究分野において、世界の最先端が発信されるのはアメリカとヨーロッパが主であり、研究留学先のほとんどがアメリカ、次いでヨーロッパとなっています。

  • 臨床留学

    臨床留学は、実際に海外の医療機関に勤務し、患者の診療に携わりながら、臨床医としてのスキル向上を目指すものです。当然、その国の医師免許がなければ臨床をすることができないため、たとえばアメリカに臨床留学するにはアメリカの医師国家試験に合格する必要があります。さらに臨床現場ではカンファレンスやディスカッションをする場面も多く、高い語学力も必要となるため、研究留学と比較してハードルは高いといえます。

研究留学研究留学〜 必要な条件、資格、費用など 〜

条件と資格

研究留学は、多くの医師が大学院で博士号を取得後の5年以内、日本国内で勤務する籍を残した状態(大学病院の医局など)で留学をしています。留学受け入れ先を自力で探すのは難しく、医局や病院などの後ろ盾やフォローのある組織に所属することで、医局や病院に何らかのつながりのある留学先を選ぶことができます。積極的に研究留学の支援している医局や病院もあり、その場合は帰国後に戻る場所があるため安心して研究に励むことができます。

研究留学の条件としては、大学院に行って学位を取得していることが挙げられ、医局や病院などの後ろ盾やフォローのある組織、機関に所属していることで研究留学は容易になります。研究留学の準備としては、履歴書(CV)や推薦書などの書類作成、ビザの取得などがあります。
留学先の母国語や英語を話せることに越したことはありませんが、研究留学の場合は語学力試験(英語圏であればTOEFLまたはIELTS)の受験や提出は必ずしも必須ではありませんし、国別の医師免許試験なども受ける必要はありません。

費用

海外留学の準備費用として平均100万~300万円、国によって差はありますが毎月の生活費として日本円にして10万~30万円が必要となるようです。研究留学の場合、受け入れ先が給料を負担する場合がありますが、給与が無い場合も多いため1年の留学なら生活費だけで30万×12カ月=360万は必要となります。

ただし、費用の準備が難しくても、研究費、滞在費や給与補填などの奨学金(補助金、助成金)を日本で受けることができます。奨学金制度を実施している団体や医療機関はいくつかあり、受給にあたっては「○年以上の留学であること、留学中の収入が○○万円以下であること、支給は1年で○○万円まで、留学前後は一定期間○○に勤務すること」などの条件があるので注意が必要です。また、応募した全ての医師に奨学金が支給されるわけではありません。採用枠が決められているため複数の応募は必須だと言えます。

研究留学の奨学金(補助金、助成金)の種類や詳細については下記のサイトが参考になります。

医師の海外留学:奨学金制度と特徴

留学期間

研究留学の期間は一般的に1年~2年が多いです。
期間延長をする医師もいますが、医局や病院などから派遣されている場合は医局や病院における人員事情によって期間延長の可否が決定されます。

下田和孝先生 志水太郎先生

臨床留学臨床留学〜 必要な条件、資格、費用など 〜

条件と資格

臨床留学をするタイミングはさまざまであり、早くて初期臨床研修終了後に留学する医師もいます。外科系の場合は、国内で一通りの手技を学び、専門医取得後、更なるスキルアップや最先端の手技を学ぶために臨床留学するパターンが多いです。

研究留学とは異なり、臨床留学のハードルは高く、臨床医として留学先で医療行為を行うための最低条件として、その国における医師免許を取得する必要があります。たとえば、アメリカの場合はUSMLE(米国医師免許試験)のステップ2まで合格し臨床研修資格を取得しなければなりませんし、そのためには非常に高い英語力が必要で、英語能力試験(TOEFLまたはIELTS)の提出も求められます。日本にはUSMLE専門の予備校もあり、医学生のうちから通っている方もいます。

海外で臨床を行うためには各国の基準を満たす厳しい条件がありますが、最短ルートとして、アメリカの場合は、東京海上日動メディカルサービス主催の臨床医学レジデンシー・プログラムに若手医師を派遣する民間のプログラム(N Program)や、野口医学研究所の医学交流プログラムなどを利用する方法があります。

また、Cadaver(献体)を用いた手術トレーニングを目的とした臨床留学や、見学や交流を目的とした数週間からの短期留学に関しては特に条件もなく、資格も必要ありません。

費用

臨床留学に至るまでの費用(国別の医師免許取得までの費用など)や、その後、レジデントとして病院に応募し、試験や面接を受ける期間などは当然ながら無給状態となります。また、実際に働き始めても給与は決して高くありませんし(日本円にして200万~500万ほど)、採用されても給与の支給が絶対と言う保証もないので覚悟と貯金が必要です。

医療機関によっては海外留学支援制度があり、「○○で3年間勤務する代わりに米国への3年間の臨床留学を認める、留学期間と同じ年数だけ○○に勤務する」などの条件がありますが、助成金の支給を受けることができます。

中川麗先生

留学期間

1年~3年が多く、アメリカにおけるレジデンシーの場合は3年間が一つの目途となり、現地でそのまま医師を続ける方もいます。

国別で知る、医師の皆さんが多く留学される特徴や留学条件など

国別で知る、医師の皆さんが多く留学される
特徴や留学条件など

アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、ベルギー、タイについて、各国の特徴や留学条件などを紹介します。臨床を伴わない研究留学に関しては、各国とも特別な資格や試験は必要なく、受け入れ先があれば多くの国で可能です。
臨床留学に関しては、資格や条件があり、また国によって異なるため注意が必要です。
(各国における生活環境の詳細や、渡航や就労に必要なビザの申請などについては大使館・総領事館のホームページを記載していますので、そちらからご確認ください。)

アメリカ留学の特徴

アメリカの医療は世界最高水準にあり、世界に向けて最先端を発信し続けています。従来の方法では治療が難しいと診断された患者たちが、世界各地からアメリカの地に降り立っていますし、多くの医師がアメリカに留学しています。しかも優秀な人材が集まっていることが特徴であり、人脈づくりにおいても非常に有効だといえます。だからこそ、アメリカへの臨床留学は非常にハードルが高いです。

■ アメリカでの臨床留学への条件

アメリカへ臨床留学するには、まずUSMLE(米国医師免許試験)のステップ2まで合格する必要があります。USMLEにはステップ1、2、3と3つの段階があり、ステップ1は基礎医学分野の知識を問うもの。ステップ2は臨床の知識と技量を問うもので、模擬患者を診察する実技が含まれます。さらに、英語能力試験(TOEFLまたはIELTS)の提出も求められるため、高い英語力も必要です。
医師免許を取得後は、レジデンシー・プログラムに参加するのですが、プログラムへの応募者数が多いため、USMLEスコアによってスクリーニングされ、その後、推薦状などによって臨床留学の受け入れが決まります。

詳細については下記のサイトが参考になります。
USMLE合格マニュアル・合格体験記 民間医局レジナビWeb

中川麗先生

北原大翔先生

カナダ留学の特徴

自然豊かな広い国土を有し、バンクーバー、トロント、モントリオールなどの都市圏が共存し観光地としても世界的に知られています。寒さに厳しいというイメージがありますが、北極圏の極北地域以外はそれほどでもなく、穏やかな気候の地域が多いです。また、日本からの留学生や観光客が多く治安も比較的良いことが特徴です。カナダの医療もアメリカと並んで世界最高水準にあり、臓器移植やがんについても最先端の治療が行われています。

■ カナダでの臨床留学への条件

カナダへの臨床留学には、アメリカと同様にレジデンシー・プログラムを修了する必要があり、MCCEE(Medical Council of Canada Evaluating Examination)という臨床医学試験の合格が条件となります。ただし、カナダでは臨床フェロー(専門研修医)として留学する方法もあり、資格は日本の医師免許と専門医資格の他に、USMLE(米国医師免許試験)などの試験やTOEFLで一定の点数を満たすだけで臨床フェローとして働ける州もあります。

濵元 陽一郎先生
イギリス留学の特徴

イギリスは世界最古の大学であるオックスフォード大学など世界的にレベルの高い教育機関が揃っています。医療教育においても、ケンブリッジ大学、UCL、バーミンガム大学、オックスフォード大学、マンチェスター大学など、世界を牽引する多くの有名大学があります。MBA(経営学修士)の名門校も数多くあるため、MBA取得のために留学する日本人も多くいます。気候は穏やかで、犯罪率が低く治安が良いので、生活しやすいことも特徴です。

■ イギリスでの臨床留学への条件

イギリスへの臨床留学には、まずGMC(General Medical Council)へ医師登録をする必要があり、その条件としてIELTSという英語試験で規定の点数を満たすことが必要ですが、相当高いレベルの英語力が求められます。

さらにPLAB(Professional and Linguistic Assessment Board イギリス国外の医学学校卒業生がイギリスで医師として働くために必要な医学知識と技能をチェックする試験)にも合格する必要があります。この試験はWHO認定の医学校の卒業生なら誰でも受けることができ、日本の医学部卒業生も受けることができます。

またイギリスでは、外国人医師が医師登録をする方法として複数の学会が実施しているInternational Sponsorship Schemeという制度があります。この制度は日本を含む専門医制度を持つ国でその学会に見合う専門医を取得し、英語試験をクリアすることが条件で、さらに身分を保証してくれる医師1名(本国)と推薦の医師2名を確保することで申請をすることができ、医師登録が可能となります。

オーストラリア留学の特徴

国土は広大で世界有数のリゾート地をもつオーストラリアは治安が良く、国民は親日家であり日本食レストランや日系のお店が多いのが特徴です。気候は一年中温暖で、日本と比べて湿度が低いため、夏は暑くても嫌な暑さではありません。冬でも、日中は夏のように気温が上がる日もあります。日本人留学生が多いこともあり、日本ではオーストラリア留学をサポートしてくれる企業もいくつか存在し、医師の留学サポートをしている会社もあります。オーストラリアは世界屈指の医療先進国であり、多くの医師に留学先として選ばれています。

■ オーストラリアでの臨床留学への条件

オーストラリアには日本の医師免許のように国家資格と呼べる制度はなく、各州の定める法律に則って医師の登録が行われる登録制になり、オーストラリアへ臨床留学をする場合は、この医師登録を行う必要があります。

登録方法はいくつかありますが試験が必要であり、「AMC(Australian Medial Council)が行うAMC Examinationに合格し、実技審査で認めてもらう」、「AMCが認定する医療専門査定期間で技術や知識を認めてもらい認定をもらう」などの方法があります。

また、オーストラリアの医科大学に入学して卒業資格を得ることができれば、AMC受験は免除され、実技審査のみで登録ができます。いずれにしろ、高い英語力が必須であることはいうまでもありません。

月岡 祐介先生
ドイツ留学の特徴

ドイツは世界第4位の経済大国であり、学問の分野でも大学の国際化では世界一と評価されており、ノーベル賞受賞者数は、アメリカ、イギリスに次いで多い国です。治安も良く、夜間の外出も危ないことはほぼないといえます。さらにドイツは環境意識が高く、ごみの分別システムや再生可能エネルギーの先進国であり、街並みは美しく、生活しやすいのも特徴です。

古くから医療先進国として世界をリードしてきた国であり、日本の医療の多くがドイツの医療を参考にして発展してきました。医療水準は高く、多くの分野で世界トップレベルの医療を提供している医療機関が多く存在しています。

■ ドイツでの臨床留学への条件

ドイツでは、アメリカやカナダなどと異なり、日本の医師免許があれば、ドイツの医師国家試験が免除されます。ただしドイツで臨床を行なう資格を得るためには、医師としての労働許可が必要であり、取得には州ごとに定められた条件をクリアしなければなりません。最低条件として、ドイツ語の検定試験のB2以上に合格することが条件となります。B2とはヨーロッパ言語共通参照枠というガイドラインで定められた能力のことで、非常に高い語学力が求められます。

さらに、労働許可を得ても、ドイツを含むEU圏では滞在・就労ビザの許可が下りるかどうかは状況によって変わります。医師過剰の状況であればビザが下りない、という事もあり得るため注意が必要です。ただし、ドイツでは医師不足の状況のためビザは下りやすくなっています。

ベルギー留学の特徴

ベルギーは、オランダ、ルクセンブルグと合わせてベネルクス三国と呼ばれ、北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏、中央に位置しフランス語とオランダ語が公用語のブリュッセルの3つに別れ、連邦制をとっていることが特徴です。ブリュッセルにはEUの本部も置かれ、ヨーロッパの金融の中心地となっており、また日本企業も多いため、邦人が多く住んでいます。

また、交通システムも発達しているため、 ロンドンやパリ、アムステルダムといった都市へ列車で1、2時間足らずで行くことができます。ベルギーなどのヨーロッパは最新の医療機器の臨床応用と普及が日本より早く、日本ではまだ実施されていない治療を経験できることが魅力です。

■ ベルギーでの臨床留学への条件

ベルギーへの臨床留学には特別な試験は特になく、外国人は原則として大学病院においてのみ臨時の許可によって臨床に従事することが認められていています。ベルギーの公用語は、地域によってオランダ語、フランス語、ドイツ語とあるため留学先で使用されている言語を学ぶ必要はあるでしょう。

タイ留学の特徴

タイ王国は国土の大部分が熱帯モンスーン気候であり、一年の平均気温は約29℃、湿度は平均70~80%となっており、一年を通して温暖な国です。日本人に対しては非常に友好的で大の親日国であり、物価は日本に比べて非常に安いことも特徴です。外食でも50バーツ前後(約150円)から食べることができ、他国と比較して月々の生活費を大きく抑えることができます。

医療事情は、首都バンコクなどの主要都市の基幹病院や大きな私立病院の医療水準は高く、日本の病院と比較しても遜色はありません。タイは医療ツーリズム(居住国とは異なる国や地域を訪ねて診断や治療などを受けること)発祥の地とも言われ、タイ政府は2004年に「タイをアジアの医療拠点として開発する」という5ヵ年計画を策定し、医療ツーリズムを国家政策としてきました。欧米やシンガポールなどよりも安価に治療を受けられることもあり、世界各国から患者が訪れています。タイは医師数が少ないこともあり(人口当たりの医師は日本国の約1/5)、留学医師でも早い段階から手技を任され、充分な症例数を経験することができます。

■ タイでの臨床留学への条件

タイに臨床留学する際に必要な資格は医師免許以外に特になく、コミュニケーションもほとんどが英語で通用するため、他国の臨床留学と比較してハードルが低いことが特徴です。

中村 裕昌先生

【 記載データ・記事内容について】※この記事の内容は下記の資料やデータなどを参照しています。

・UMIN大学病院医療情報ネットワーク研究センター 各種助成(研究助成、海外留学助成、留学生受入助成等)公募情報
https://center6.umin.ac.jp/cgi-open-bin/josei/select/index.cgi?serv=jlist&func=search&nendo=now&order=end_date

・USMLEプログラムのご紹介 KAPLAN(カプラン)認定 東京テストプレップセンター
https://www.kcep-tokyo.com/program/#2152

・東京海上日動メディカルサービス N Programについて
http://www.tokio-mednet.co.jp/nprogram.html

・野口医学研究所の医学交流プログラムについて
http://www.noguchi-net.com/program/index.html

・在日アメリカ大使館・領事館
http://www.tokio-mednet.co.jp/nprogram.html

・在日カナダ大使館
http://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/index.aspx?lang=jpn

・駐日英国大使館
http://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/index.aspx?lang=jpn

・在日オーストラリア大使館
http://japan.embassy.gov.au/

・在日ドイツ大使館
http://www.de.emb-japan.go.jp/nihongo/

・在ベルギー大使館
http://www.be.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

・在東京タイ王国大使館
http://site.thaiembassy.jp/jp/